ニュードコットンニュードクラブ

プロトタイプ・コットン・ボウ 【綿で紡ぐメロディ 冒険譚】

大立ち回りで会場をおさえた『段取り』班の活躍から移って、
次は『弓作り』の任務を買って出たラボメンの冒険を垣間見ていきましょう!

『弓作り』とは言っても、
原木を加工して弓を作るわけではない。
市販の弓に張ってある毛を取り外して、
その代わりに綿糸を張って弾ける状態にするのが、
彼らのミッション。

だからと言って簡単なことではない。
ニュードの大人たちも含めて、
そんな経験を持っている人は一人もいないからだ。

職人の方が実際に弓に毛を張っている動画を見て
大体の手順を確認すると、
それに倣って弓をバラすところから手をつけていく。

まず、弓のおしりにあるネジを手で緩めて抜き取る。
「とれた…!」
演奏時に手で持つ部分にあるフロッグ(かえる)と
呼ばれるパーツが弓の棹(さお)から外れる。

毛は、弓の先端とフロッグにそれぞれ
木でできた楔(くさび)で固定されている。

楔は演奏中に取れないよう、
小さな隙間に叩き込まれているので、
ペンチでリングごともぎ取ったり、
慎重にハリで砕きながらほじくり出す。

両端それぞれの楔を取り除くと、
毛が取り外せて空っぽの弓が出来上がる。

次はそこに糸を張る。
と言ってもまだ糸はできていないので、
ひとまずは、100円均一のお店で買った市販の綿糸を使って、
それで実際に演奏ができるのかを確かめることになっているのだ。

綿糸を束ねて片側を縛ると、
そこに瞬間接着剤を染み込ませる。
テンションがかかった時に糸が抜けてしまわないためだ。

100円均一のお店で買ったヒノキの木材を
削って作った楔を差し込んで、
糸の両端を弓に固定する。

最後に、弓のお尻のネジを締めて完成!
「できたー!!」
それまで糸撚りに集中していたラボメンも思わず立ち上がる。
「すごい、本当に弓だ!」
「普通の弓の毛より白いね」
全員が初めて見る“綿の弓”の白が、会議室の照明の光を受けて煌めく。

弓作り(毛替え)の作業を振り返ると、
繊細な加工が必要なことがあったかと思えば、
細かいけど力がいる箇所もある。
『横にスライドする』ことの難しさもあったし、
事前に動画で学んだのと違うこともしばしば。

それぞれの工程に、
いちいち違った難しさが潜んでいた。

そういった壁にぶつかるたび、
「そういう時は、これを使うといい」と
便利な道具やヒントをくれるのは、
ニュードのばでさんなのだった。

一見、寡黙なおじさんだけど、
手順やコツを丁寧に教えてくれて、
うまくできた時は大げさに喜んでくれる。

(でも、本当に自分で弓が作れた…!)

試しに弾いてみようとネジを回して張りを強めた瞬間、
「あっ!」

糸の束が一瞬宙で踊ってから、床に向かって垂れ下がる。

弓の先端に嵌め込まれた楔が張力に耐えられず、
外れて飛んでいってしまったのだった。

【綿で紡ぐメロディ 冒険譚】
プロトタイプ・コットン・ボウ おわり

前の記事次の記事