ニュードコットンニュードクラブインタビュー

3. 見て、持って、触ってもらって伝わること 【田中さんにうかがった染織のこと】

オンライン販売が当たり前のこの時代でも
手作り、手売りで作品を送り出すことを大切にする田中さん。
手芸を趣味にするラボメンバーが
自分の葛藤の答えを見つけるためのヒントを聞きました。

じぶんラボ
じぶんラボ

前に展示会を開かれていて
作品の販売もされてたっていうのを聞いたんですが
それは展示会だけで売っているんですか。

田中さん
田中さん

なかなかね、こういうことをやってる人はね
いつでも売ってるよっていうところがなかったりするので
自分でどっかでギャラリーを借りて売っています。

あとは今は自分は神楽坂にあるお店で扱ってもらっているんですが
そんな風に気に入ってくれる方が
「これをうちに置きたいな」って言ってくれると
そこで販売してもらえるっていうこともありますね。

じぶんラボ
じぶんラボ

今だとオンラインショップとかでお店をネット上に作れる時代で
調べたらいっぱい出てるくるくらい増えている中で
田中さんが活動を続けられた理由を教えてもらえますか。

田中さん
田中さん

焼き物とかをネットショップで売ってる方もいますね。
自分なんかは織りをやっていて
焼き物の友達とかガラスの友達とか木工の友達とかもいるんですけど

ネットに上げた写真だと表だけしか見えなくて
手触りとか重さっていうのは
いくら何グラムですよって書いてあっても
持ってみて自分が重いって感じるかとか
同じものでも色によって黒い方が重く感じるとか
白い方が軽く感じるとかっていうのがあるので
「持ってみてほしい」とか「触ってみてほしい」っていうのがありますね。

あとは、“グリーンコットン”って言ったら
当然グリーンなのかなと思われるんですけど
これはちょっとゼンマイを入れちゃってるもんで
プツプツ茶色いのが入ってるんですね
こういう自然の色なので、実際にはグリーンとは違いますよね。

田中さん
田中さん

こういうものが
もっともっとはっきりした色の方がいいとかっていう人とか
きれいにグリーンじゃないと嫌だっていう人もいて
写真に撮るとわからなかったりするので

ちゃんと
「これとこれとどう違うんですか」
「こっちの方がいいな」
って、見てもらわないとわからない。

だからネットショップよりも人に見てもらって
触ってもらってというのが多いですね。

友達の焼き物をやっている方でも
その焼き加減でちょっと変わった陶器を作る方がいるんですけど
「この色が欲しい」とは言われても
その色は絶対次には出ないよって言うので
やっぱりこう「レッド」とかの言葉じゃなくて
“見てもらう”ようにするんですね。

じぶんラボ
じぶんラボ

なるほどー。

田中さん
田中さん

同じものを型で作ったりとかって
いうものだったらいいんですけどね。

じぶんラボ
じぶんラボ

田中さんが織ったりされてる中で
自分の中でこう、気に入った作品ができる予感というか
これはきっとうまくいくぞ
みたいに感じることってありますか?

田中さん
田中さん

ありますね。

自分で糸を作ったり
うちの奥さんが紡いでくれたりするのがあるんですけど
その中で糸を持ってる時の“調子”っていうんですかね
同じ幅とか、糸の具合がちょうどいいすごくいいなっていう。

調子に乗りすぎると糸が細くなっちゃうんで
「織ったらちょっと薄すぎちゃったかな」
っていうのもいつもあります(笑)

田中さん
田中さん

あと初めての素材とかでやると
こういうものになるのか、っていう驚きもありますね。

やなぎ
やなぎ

新しい発見があったり
「こういうふうにやりたい」
っていうイメージが先にあって
その通りにできると嬉しいですよね。

作家としての喜びはいろんなところにあるんですね。

自分が作ったものが
それを気に入ってくれるお客さんの手に渡ったときとかはどうですか。

田中さん
田中さん

この綿にしてもそうですけど
他に綿をやってる方から
「すごく、きれいですね」
って言ってもらえたりするのも嬉しいですね。

同じようなものをやられてる人に褒められるとか
意見交換したりするっていうときに
とてもやりがいがあったり楽しかったりします。

やなぎ
やなぎ

このあいだの展示会にお邪魔したときにも
田中さんの奥様が対応してくださったんですけれど

そのときに綿花を栽培してる人じゃないとわからない
“あるある”みたいな話をお互いにできて
普段はなかなかその話が通じる人がいないだけに
とても盛り上がりました。

田中さん
田中さん

“やらないとわからない”っていうのはありますよね。

できたものだけをパッと見ると
「簡単にできるんですね!」
ってつい思ってしまうので

じぶんラボ
じぶんラボ

実際は、糸を紡ぐのも難しかったです…。

田中さん
田中さん

紡いでいくのは慣れなので、
どんどん、どんどん
やっていったらいいと思います。

いつも長い繊維の綿でやると、
それが当たり前になってだれちゃうんですが
こういう難しい、短いのからやっていくと
長いのも簡単に紡げるようになる。

やなぎ
やなぎ

手回し式の糸撚り機を買ったんですけど
それを平塚中等教育学校の生徒の皆さんに
協力してもらって電動化したんです。

ミシンのモーターをつけて
足で踏むと高速で回るっていうふうに。

やなぎ
やなぎ

それで綿の短い線でもたくさん撚りをかけられるので
長い糸が作れるんじゃないかということで
やったんですけどなかなかうまくできず。

やっぱり手元の感覚とかっていうのは
まずスピンドルを使って身につけないと難しいでしょうか。

田中さん
田中さん

そうですね。

まずスピンドルで慣れてから
スピードの速いものはあとからやっていかないと。

最初からスピードが速いのをやると
引き具合とか今どの辺なのかなっていうのは
分からなくなっちゃいますね。

「3. 見て、持って、触ってもらって伝わること」はここまで。
次回の更新では「4. 縄文時代の衣生活を垣間見る」をお届けします。