田中さんのお電話中にお部屋の中を探検。
ラボメンバーが目を止めたアーチ状の道具を通じて
遠い昔、縄文時代のくらしを垣間見ることができました。
♪(田中さんの電話に着信)

ちょっと待ってくださいね
友達から電話、すみませんね。
いろんな作品見ててください。

どうぞ。




すみません、仕事の話でした。

田中さん、これはなんですか?


それは、古い着物を割いたやつを載せてるんですけど
昔むかし日本に織りが伝来する前の縄文時代後期に日本で使われた
布を作るための道具ですね。

この、木でできた道具がですか。

そうですね、それを“編む布”と書いて
“編布(あんぎん)”といいます。

あんぎん…へぇ〜〜。
これで布を作るんですか?

縄文人は麻とかカラムシとかそういうものから
それで布を作ってましたね。

ああ!
そういえば、足の指に引っ掛けて編んだりみたいなのが
昔あったと聞いたことが…。
その突起のところにかけてやるんでしょうか。

その縦糸に(足の指を)かけたりする
っていうやつですかね。

そこに縦糸を張ってこうして…。

今だと簾(すだれ)ってありますよね。
そこにもかかっているあれ
今はあんなふうに使われてますけど


それは1センチ間隔の溝になってるんですけど
当時はもっともっと細かい溝でも編んでるのもあって
それが縄文人が着ていた服になりますね。


へぇ〜〜、すごい!縄文人。

江戸時代でもちょっと貧しい方が着たり
お坊さんとかも着てましたね。
寒いのでストーブに薪を入れましょう。
ちょっとこれ虫が食っちゃってるんでね
粉がいっぱいついちゃってるんですよね。


この建物の後ろに竹が生えちゃってるので
それをね、薪にして減らすっていう。

竹の薪を使ってるんですね。

そうですね、ただ竹は結構ね、
煤(すす)がたまるんですよ。
さて、織りはずっと後から来たので
昔はさっきの大きい道具(※)を使いましたね。
※「大きい道具」は、1.糸を”紡ぐ”。糸を”績む”。の後半でご紹介いただきました
あとね、リョウシさんからカワをもらって着てるとかね。

“リョウシ”から“カワ”…、“皮”ですか?

そう、動物の“皮”を物々交換で。

織りで作る生地と動物の皮とで
通じるところはありますか。
逆に“ここが違う!”っていうことでも。

それはやっぱり、皮は匂いを取らないとね。
剥いだ皮はそのままだと匂いが残っちゃう。
そっちの方があったかいかもしれないですけどね。

お店で売られている革製品が匂うことはまずないですが
あれは脱臭加工をしてあるんですね。


先日の田中さんの展示会を訪れて思ったんですけれど
一つ一つの作品に独特の個性があって
逆に定番商品みたいに同じものがたくさん並んでる
みたいなのは見かけませんでした。
田中さんの中で“代表作”みたいなものとか
“これが定番!”みたいなのってあるんですか。

そうですね、まず自分はウールから入ってるんです。
ウールを草木染めにするっていうのから入ってるので
草木染めで黄色と赤とかに染めた無地のものがもともとですね。


でもそれからだんだん綿をやり始めて
今で言うならばグリーンのコットンが主流ですかね。

一般的な白いコットンじゃなくて
グリーンを主流にされているのはなにか理由があるんですか。

ほかの人があんまりやってないから(笑)

確かに珍しいですもんね!

植えて育ててパッて綿ができるのはね
園芸店でも綿の種を売ってるから誰でもできて
やれば楽しいですけど
でもその白い綿だと当たり前だし
そこから先に行くのが大変でしたね。
20代の若い頃に
緑の綿があるよ、赤茶い綿があるよっていう報せを聞いて
どうしてもそれを手に入れたかった。
その種を分けてもらえる機会があったんですけど
でももうみんなに配布しちゃった後で
自分は茶色い綿しかもらえなかったんです。
でもそのうちにネットで緑の綿をやってる人を見つけたので
「いただけませんか」って連絡して
こちらは藍の種をいっぱい持っていると伝えると
ではそれと交換しましょうとなって。


ついに緑の綿を手に入れたんですね。
僕も白い綿が普通だと思っていたところへ
茶色の綿があるっていうことを教えてもらって
そのあと、緑もあるよって言われたときは驚きました。

世界には黄色い綿もあるし
紫色の綿もあるそうですよ。

へえー、紫色の綿!

いつかお目にかかりたいですね(笑)
「4. 縄文時代の衣生活を垣間見る」はここまで。
次回の更新では「5. 日本での綿の工業化における課題」をお届けします。